技術開発

道路事業の技術開発

時速100km/で走行しながら、撮影や計測ができる車両を開発しています

トンネル覆工点検車

ラインセンサカメラの採用により、幅0.2mm以上のひび割れが視認可能な画像を撮影することができ、近赤外線LED照明の採用による撮影照明の不可視化などお客様への安全配慮技術も採用しています。

路面点検車

路面ひび割れ撮影(ラインセンサカメラ)、わだち掘れ計測(光切断方式)、IRI計測(レーザー変位計による3測点法)が同時に実施可能です。

鉄道事業の技術開発

鉄道車両が軌道上を安全に走行する為の技術を開発しています

建築限界支障検知システム

先頭車両に設置したビデオ画像から、建築限界に干渉するものをリアルタイムで検知するシステムです。例えば、山間部などで植生が建築限界に干渉した時、自動的に担当者に警告メールが発報されます。

トンネル覆工表面検査システムの開発

JR西日本グループとNEXCO西日本グループは、トンネルの検査業務の効率化を図るため「新幹線トンネル覆工表面検査システム」の共同開発を行いました。当社が開発したトンネル覆工点検車の技術が応用されています。

金属溶射の技術開発

Al-(5%)Mg金属溶射高力ボルト

Al-(5%)Mgプラズマアーク金属溶射の耐用年数は、100年以上という目標を設定しています。皮膜の耐久性能を評価する手法のひとつである中性塩水噴霧サイクル試験結果から、金属溶射の皮膜は6000時間(100年以上)の耐久性能が確認されています。
また、金属溶射皮膜の品質を確保する為、ブラスト施工後の鋼素地面の品質を検査する「レーザー散乱光表面粗さ計」や「金属溶射施工ロボット」を開発しています。
溶射ボルトは、腐食促進試験により溶融亜鉛めっき高力ボルトの約4倍以上の耐食性があることが確認されています。

TAPS Tester

レーザー散乱光粗さ計

金属溶射の防食性の向上には付着強度が大きく影響するため、素地調整が重要となり、一定の表面粗さを確保する必要があります。
そこで、弊社では、金属溶射におけるブラスト処理後の鋼材面の表面粗さと除錆度を容易に評価できる機器(TAPS Tester)を開発しました。

  1. 狭隘で薄暗い現場環境に対応
    測定した除錆度の評価結果は、手元のコントローラーのLEDランプ(赤、青)で表示します。
  2. 広範囲を短時間で測定可能
    TAPS Testerは、1/15秒間隔で表面粗さを測定し除錆度を評価するため、連続測定が可能となります。
  3. コバ面にも対応
    測定範囲の狭いコバ面でも、アタッチメントを交換することで容易に測定することができます。

システム原理

レーザー光のコヒーレント(波長、位相がそろっていて明確に干渉する)な光を物体(鋼材)表面に照射すると、表面のランダムな凹凸により、ランダムな干渉縞が発生する。これをスペックルパターンと呼び、表面凹凸の情報を含んでいます。
本機はレーザー光を非計測粗面に照射し、計測面の凹凸により発生した干渉縞から粗面の評価を行なっています。

除錆度の判定

対象鋼材面の除錆度は、LEDの色によって判定します。LED表示は、基準となる粗さ指標から目安とした除錆度を表示します。
なお、粗さ評価の判定値は計測器の個体差による影響があるため参考値です。

測定結果

本機では、測定結果(CSVファイル、JPEGファイル)をUSBメモリへ保存します。
CSVファイルには、計測距離と粗さ指標が1/15秒ごとに記録されます。JPEGファイルには、計測を行った軌跡が粗さ指標ごとに色分けされて保存されます(レベル1:赤 レベル2:黄 レベル3:青)。
1操作ごとにファイルを保存することにより、測定結果の再現性と電子データ化を可能にしました。

本機器はNEXCO西日本、(株)富士技建とともに共同開発しました。

  


鋼材の腐食速度計測

コンクリート構造物の再劣化に介在するマクロセル腐食とは

近年、床版増厚やコンクリート構造物の断面修復後における損傷の再発や再劣化が顕在化しており、維持管理上の問題となっています。コンクリート構造物の再劣化では、マクロセル腐食といわれる腐食形態が介在していることがあります。マクロセル腐食は、内在塩分量の多いコンクリート構造物の断面修復などで発生する場合があり、部分的に腐食速度が極端に速くなるため、補修工事ではマクロセル腐食に対する検討を行って、適切な対策が必要になります。
コンクリート中の鋼材腐食は、写真に示すように鋼材表面の不動態皮膜が破壊された部分で、アノード域とカソード域と呼ばれる電池が形成されることで進行します。一般的な鋼材腐食では、アノード域とカソード域が同位置で起こっていますが(これをミクロセル腐食といいます)、塩化物イオン等の影響で部分的に鋼材が腐食し易い環境下では、化学反応が離れた位置に起こる場合があります。このような孔食を伴う腐食を“マクロセル腐食”といいます。つまり、塩物が多いような箇所では鋼材がイオン化し易く、局所的に激しい腐食が発生します(図-マクロセル腐食参照)。

コンクリート中の鋼材腐食メカニズム

マクロセル腐食対策

コンクリート中の鋼材腐食に対する対策としては、鋼材に防錆処理を行う方法、コンクリート表面に撥水処理などをする方法、コンクリートに亜硝酸リチウムなどを混入する方法、電気防食工法などが用いられています。特に、断面修復時におけるマクロセル腐食対策としては、打継ぎ面に撥水系の表面保護材を塗布する工法(遮蔽型マクロセル腐食対策工法:平成18年度 土木学会関西支部 技術賞)が行われており、長期的にマクロセル腐食を抑制する効果を確認しています。

遮蔽型マクロセル腐食対策の実施例

マクロセル腐食速度の計測モニタリング

実橋の補修工事で実施された遮蔽型マクロセル腐食対策工の長期的な効果を確認するため、当社では、コンクリート埋め込み型の小型センサーを用いたモニタリング計測を実施しています。小型センサー設置箇所の分極抵抗、液抵抗、自然電位を計測し、これらの計測データから鋼材腐食速度を算出して、コンクリート構造物の健全性評価を行います。

マクロセル腐食速度の計測システム


路面形状計測・評価システム

高速道路を維持管理していく上で、舗装路面の平坦性は利用者の走行快適性、舗装の維持補修計画、沿道環境に影響を与える重要な要因となります。その評価指標の一つであるIRI(International Roughness Index:国際ラフネス指数)をより効率的、かつ適切に計測できる路面形状計測・評価システムを、西日本高速道路エンジニアリング関西株式会社と共同で開発しました。
本システムでは、高速道路と一般道のそれぞれの特徴に適した2つのシステムがあります。(詳細仕様はシステム仕様参照)

  1. 高速移動下での測定
    高速移動下(Pro:100km/h)の走行速度で、1cm ピッチの路面データ(路面プロファイル)を測定することが可能です。
  2. 距離補正機能
    急カーブや運転精度により生じる距離の累積誤差を分析ソフトにより補正することができ、ジョイント位置などを正確に検出することができます。
  3. 任意区間での路面プロファイル・IRIの算出
    路面プロファイルは1cm または10cm ピッチ、IRIデータは10m、100m、200m ごとに任意の区間で算出することができます。
  4. IRIデータの可視化
    IRIデータはKMLファイルに出力することができ、GoogleEarthなどから走行位置および路面状況を確認することができます。

システム概要

計測車両(ハードウェア)
路面形状計測・評価システムは、レーザー変位計、加速度計、非接触距離計、GPS等の各種センサーを搭載した計測車両で道路上を走行することで路面計状を計測します。
本システムで得られた路面形状と従来の計測との整合性は、JHS248-2005 に規定されている精度(3m プロフィルメーターによる路面形状に対して±30%以内)を満足しています。

分析ソフト(IRIViewer)
 IRIViewerでは、距離補正および路面プロファイル・IRIの算出機能により、計測データを効率的に整理することができます。特に、IRI Proではジョイント段差など局所的な変状も確認することができます。
 加えて、IRIデータはKMLファイルとして出力することでGoogleEarthなどから容易に路面状況を確認することができます。(IRIの大きさにより色分けする機能も実装)
(例えば、赤:3以上、黄:2.5~3、緑:2~2.5、青:2以下)

計測原理

路面プロファイルの測定手法(3点法)
3台のレーザー変位計を使った路面プロファイルの測定原理は3点法と呼ばれ、測点1と測点3を結ぶ仮想直線を3mプロフィルメーターの基準梁と仮定し、この仮想基準梁と路面との相対変位を路面の縦断プロファイルとするものです。
本手法で得られた相対変位は、走行時の車両振動や段差通過等によって生じる車両の挙動(前後の動き)をキャンセルすることが可能となります。

3mプロフィルメーターとの比較
同一路面上におけるIRI Logger Proと3mプロフィルメーターの路面プロファイル波形を比較した結果、両者の路面計状がほぼ一致しています。 また、IRI Logger Proの標準偏差についても、3mプロフィルメーターの測定値に対して、誤差10%以内に収まっています。
(参考 : 土木研究センターの性能試験許容値は誤差30%)

システム仕様

IRI Logger ProIRI Logger Lite
計測可能速度100km/h60km/h
車両改造必要不要
センサー単体精度0.001mm約0.1mm
太陽光の影響なし稀に受ける場合あり(※1)
路面性状自動測定装置性能確認試験合格実績あり合格実績あり
計測ソフト
分析ソフト距離補正機能×
路面プロファイル出力データ間隔1cm、10cm10cm
IRI(10m、100m、200m)の算出
KMLファイル出力
カタログダウンロードダウンロード

※1 Liteのセンサーは弊社実績にて太陽光の影響(晴天時)にノイズ成分が含まれたことがあります。

StructureTap

衝撃弾性波を用いた非破壊検査システム

StructureTapでは、弊社で開発した計測アプリ(SIT Logger、CTM Logger)を用いて、杭の非破壊調査コンクリートの厚さ測定をすることができます。
データ転送は、無線通信(Bluetooth)で行うため、計測モジュールとタブレットをケーブルで接続する必要がありません。

1.コンパクト
計測モジュールは、ポケットに収納できるコンパクトサイズになっています。

2.簡単ポインティング
対象面を格子状に設定することで、測定箇所を容易に把握できます。また、測点番号の色を変えることで、異常箇所をすばやく確認できます。

3.簡単計測
計測モジュールは、ポケットに収納できるコンパクトサイズになっています。

杭の非破壊調査(SIT:Sonic Integrity Test)

システム概要
SITは、「均質な物質中を伝搬する波は、ある一定の法則に従って進行する」という「波動理論」の性質を利用し、主に基礎杭を測定対象として、長さや損傷確認を行うことを目的とした計測手法です。
測定は、杭頭やフーチング上面等のコンクリート表面に加速度センサーを設置し、その近傍を小型ハンマーで衝撃波を入力して測定を行います。そして、杭の底面で跳ね返ってくる反射波を測定し、その所要時間と弾性波の伝わる速度(伝播速度)の関係から長さを求めるというものです。

実績と作業状況
当社では、様々な現場において、SITを用いた杭調査を実施してきました。

事例1構造物を撤去した後の残置杭頭部からSITを行い、図面に残っていない杭の根入れ深さを確認
事例2パイルベント(杭式橋脚)の杭側面からSITを行い、杭の根入れ深さを確認
事例3地盤の側方流動が発生した橋脚基礎をフーチング上からSITで測定し、杭の健全性を確認

*写真で使用しているシステムは、旧型のもの(PCベース)になります。

SIT現場状況-1 SIT現場状況-2 SIT現場状況-3 SIT現場状況-4

コンクリートの厚さ測定(CTM:Concrete Thickness Measurement)

システム概要
コンクリート床版のような薄厚の場合、入力された衝撃波がコンクリート厚さ内において重複反射する特性を利用するCTMにより厚さの測定を行います。CTMは、重複反射波を計測し、その波形の卓越する周波数を求め、コンクリートの伝播速度を与えることでコンクリートの厚さを推定するものです。
コンクリート内部に面的な広がりを持った空隙が存在する場合、重複反射はその境界部で生じ、空隙部までの厚さ(深さ)が推定できます。

実績と作業状況
当社では、様々な現場において、CTMを用いた測定を実施してきました。

事例1舗装面からCTMを実施し、上面増厚床版と既設床版との境界部における空隙の有無を評価
事例2床版下面からCTMを実施し、床版内部の異常個所を把握するとともに、この結果を基に樹脂注入工を実施し、樹脂注入後の充填状況を確認
事例3舗装面からCTMを実施し、既設床版と床版上面増厚との境界面における樹脂注入工の効果(床版一体化性状)の確認

*写真で使用しているシステムは、旧型のもの(PCベース)になります。

CTM現場状況-1 CTM現場状況-2 CTM現場状況-3 CTM現場状況-4

仕様

SITLoggerCTMLogger
データ収録サンプリング周波数50,000Hz300,000Hz
サンプリングデータ個数40964096
測定範囲
(伝播速度4000m/s想定)
約2~100m約100~1500mm(*)
計測モジュール電源単4電池(2本)
使用環境-20℃ ~ 85℃
重量107g
データ転送Bluetooth通信
使用可能端末Nexus7 2013(Android6.0)動作確認済
収納ケースサイズ363 * 263 * 50 (mm)
同梱品タブレット(Nexus7 2013)
計測モジュール
加速度センサー(2種類)
ハンマー(2種類)
プラスチックゴム
USBケーブル
ACアダプタ
カタログダウンロード

*センサーの応答周波数はメーカー保証値で30,000Hz(測定範囲100mm以上)ですが、実際には30,000Hz以上の周波数範囲にも応答しているため、100mm以下のデータも収録可能です。

活荷重計測

BWIM:Bridge Weigh in Motion

BWIMは、本線の交通流を妨げることなく、橋梁上を通行する車両の軸重等を計測するために開発された計測システムです。BWIMでは、橋梁部材(支点部の垂直スティフナー、主桁下フランジ、床版など)にひずみゲージを設置して、車両通行時に発生するひずみ応答を解析することで荷重計測を行います。BWIMは、1970年代に米国で提唱され、同時期に我が国にも導入されています。

BWIMによる橋梁の維持管理

国土交通白書によると、今後、膨大な量の社会資本の老朽化が問題視され、道路橋も予防保全型の維持管理を行う必要があるとされています。BWIMによって、過積載車を含む通行車両の軸重等の活荷重実態を把握することで、対象橋梁の累積疲労損傷度や疲労寿命を評価し、橋梁別・路線別の疲労環境を基に、橋梁の補修検討や対策優先度の策定を行うことができます。これにより、道路橋の予防保全型維持管理の推進をサポートします。

計測システム・プログラム

BWIMの計測手法は多数ありますが、弊社では主に“支点反力法”により計測を行っています。支点反力法は、山田健太郎 名古屋大学名誉教授や、小塩達也 名城大学准教授らによって開発されたもので、鋼鈑桁橋の支点部にひずみゲージを設置するものです。支点反力法では通常、特別な調査用足場を必要としません。活荷重データの分析では、車両進入側と退出側の支点ひずみピークの発生時刻差から車両走行速度を算出し、ひずみピークの大きさや発生パターンを解析することで、軸重の大きさや車種判定などを行います。

調査実績

弊社のBWIMシステムは、平成18年の実橋計測以来、支点反力法の開発者である山田健太郎 名古屋大学名誉教授からも高い評価を頂いています。近年の高速道路における活荷重実態調査でも採用されており、各道路管理会社様から高い評価を頂いております。