橋梁挙動計測
生活に欠かせない、橋梁の健全性、安全性の評価・診断を行います
昭和30年以降大量に建設された社会資本には、設計時には予想だにしなかった過酷な荷重、環境条件下での使用に伴い、様々な形の疲労損傷が表面化しています。また、近年のコスト 縮減に伴い、新工法・新形式の構造物が建設されており、これらの静的・動的安定性に関する検討が重要となっています。
弊社では、実構造物での各種載荷実験、非破壊調査、計測管理手法、数値解析手法などあらゆる技術を用いて、新設、既設構造物の耐荷性能、耐久性能、使用性能などについて検討し、構造物全体の健全性、安全性の評価・診断を行っています。
また、診断・評価とともに補修・補強工法の提案、補修補強効果の確認、さらにはモニタリング調査による工法の妥当性の検討まで、総合的にコンサルティングすることによって社会資本を守っています。
橋梁耐荷力調査
既設橋梁の耐荷力調査は既知外力に対する応答値を計測することで、実際に橋梁が持っている耐荷力を評価します。これにより設計における仮定条件の妥当性検証や補強要否の判定などを行います。
非合成桁橋における実耐荷力の評価
この例は、既設非合成桁の実耐荷力を評価する目的で行った載荷試験の様子を示したものです。この事例では総重量約700kNのトレーラを4台載荷して、およそ現行の設計活荷重(B活荷重)に相当する荷重を与えています。試験では異音などの変状がないことを確認し、このときの応力・たわみを計測して橋梁の実耐荷力を評価しました。この結果、当該橋梁は非合成桁でありながら活荷重載荷に対しては合成桁挙動を示すことを確認しました。また、実測結果に基づいて構築したFEM解析モデルに対する設計荷重載荷時の発生応力は許容応力を満足する結果が得られました。このようなFEM解析モデルでは二次部材の影響などをパラメトリックに検討することも可能となります。
新設構造物の維持管理用初期値計測
構造物の挙動を経年的に計測するモニタリング手法による維持管理手法が積極的に研究されています。この一環として振動実験を実施することがあります。
ニールセンローゼ橋の振動実験
この例は、新設ニールセンローゼ橋(道路橋)を対象に、設計仮定条件の検証ならびに走行安定性の確認を主な目的として実施した振動実験です。
写真(左)は同期式大型起振機を橋梁上に設置して、このときの加速度応答を測定している状況を示しています。起振機による振動実験では加振周波数を僅かずつ変化させて定常加振を行い、このときの橋梁の振動を測定します。
写真(右)は橋梁上に試験車(総重量196kNダンプトラック)4台を並走走行させて加速度応答を測定している状況を示しています。
実験の結果はモニタリングの基礎資料とするだけではなく、FEMによる固有値解析結果等との整合性を確認して設計条件の妥当性ならびに走行安定性の検討を行うこともあります。
波型鋼板ウェブ橋の載荷実験
下の写真に示すような波形鋼板ウエブを有するPC6径間連続ラーメン箱桁形式の橋梁は、全国的にもその施工事例が少なく、このため、連続ラーメン形式を有する波形鋼板ウエブPC橋の構造特性について不明な部分が多く残されています。
このような新工法によって架設された橋梁の構造的特性、静的・動的挙動を明らかにし、設計上の仮定の妥当性を検証するとともに、今後の維持管理に有用な初期データを収集することを目的として載荷試験を実施しました。
載荷径間の最大たわみ量(13.5mm)に対し、隣接径間の跳ね上がり量は、解析値、実測値とも1mm以内と小さく、曲げモーメントが隣接径間にはほとんど伝達されていないことから、波型鋼板ウエブのアコーディオン効果により、曲げモーメントに抵抗しないという設計上の仮定は妥当であることが分かりました。
新設構造物の特性評価
新しい構造系や新技術を用いて構造物が構築される場合、実構造物が設計を反映した挙動を示すことを確認する必要があります。
立体免震橋における振動実験
当該橋梁は19径間連続立体ラーメン橋梁で、下部構造の基部に免震装置を持つ非常に珍しい構造形式を有しています。同一形式の橋梁はニュージーランドに鉄道橋が1橋あるだけで、道路橋としては世界でも初めての例です。 写真はジャッキを用いた水平方向への荷重載荷の様子を示したものです。 本実験では有効な変位量が得られるようジャッキ1台あたり1764kNの荷重を載荷しました。実験では載荷状態での橋梁全体の静的な変形形状やジャッキを急速開放したときの自由減衰振動を計測しました。この計測結果から実構造物における履歴曲線や構造物の振動モード・固有振動数・減衰定数を求め、立体免震構造の妥当性を評価しました。
補強・補強工法の提案
橋梁を維持していくためには、損傷要因や将来疲労損傷が発生する可能性などを正しく判定し、補修・補強する必要があります。当社では現地測定結果に基づいて最適な補修・補強工法を提案します。
アーチ橋改善工事
当該アーチ橋は床版ならびに垂直材、縦梁などの主構造部材に重大な損傷の発生がみられ、使用上危険であると判断されました。現地において応力ならびに振動測定を実施したところ、当該橋梁の損傷原因は繰り返し荷重のみならず、当該橋梁の持つ特殊な振動特性も一因であることが判明しました。このため、抜本的な対策としては単に補強するだけではなく、振動問題も考慮して検討する必要がありました。当該橋梁では、繰り返し荷重による疲労照査や振動問題のシミュレーション結果をもとに、構造系を2ヒンジアーチ橋から2ヒンジスパンドレルブレースドアーチ橋に、またRC床版は鋼床版に変更しました。その後、大きな損傷の発生はなく、現在に至っています。
疲労亀裂に対する補強工法の提案
高度経済成長期に架設された多くの鋼製橋梁において、主桁と分配横桁や対傾構の取合部に、積年の交通荷重の繰返しに起因する疲労亀裂(下図)が報告されています。リベット結合されている主桁-対傾構の取合部に発生している疲労亀裂に対し、リベット構造を変更することなく補強できる工法を提案するとともに、その補強効果を実橋での動的載荷試験によって確認しました。
補強案Cにより、補強前において疲労寿命25年以下の部位でも、10倍以上の延命化が期待できることが分かりました。
補強効果の確認試験
構造物に補強や補修を行った場合、その改善効果を評価しておくことは、その後の維持管理や将来の適切な工法選択のためには欠かすことができません。当社では、ひずみや変位をはじめ振動加速度や振動速度などを正確に測定し、補修・補強工事の評価を行います。
縦桁の主桁化、桁連結による補強効果確認
交通荷重の大型化対応の補強策として、補強縦桁の主桁化および3径間連続切断合成桁の連結化が実施されました。連結化に当たっては、下り線では鋼板連結工法を採用し、上り線ではRC巻き立て連結工法が採用されました。補強効果確認試験は、縦桁の主桁化および主桁連結工法による補強効果を確認することを目的として載荷試験を実施し、解析結果との比較を行いました。
主桁化および桁連結後の主桁のたわみ量は、補強前(現況)の約1/3~1/2程度となり、桁補強工事に伴う剛性の向上が明確に現れています。また、主桁支間中央断面における上下フランジの応力は、縦桁(増桁)の主桁化後で大きく低減し、支承取替え後で若干増加するものの、主桁切断部の連結化後において補強前(現況)の約70%程度となりました。また、縦桁(増桁)においては桁の増設による主桁化が実施され、既設上フランジから増設下フランジまでほぼ直線的な応力勾配を示しており、主桁化に伴う既設部と増設部の一体化も応力伝達の傾向から確認できました。